ヨーガで心と身体を健康に

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37回 加藤 則子

★日本ヨーガ療法学会

ヨーガで心と身体を健康に

こんにちは。ヨーガ療法士の加藤則子です。先日、大宮にて第14回日本ヨーガ療法学会研究総会が行われ、参加してきました。国内でヨーガ療法の学術的団体は他にはないと思われますが、私が所属する日本ヨーガ療法学会では、毎年研究総会を行っています。今年は、日本アーユルヴェーダ学会研究総会、日本健康促進医学会学術総会と共同開催でした。

今年も多くを学ぶことができました。

私は、自分の教室に高齢者が多いことや、現代社会では認知症患者やその予備軍が多いことを踏まえて、「高齢者・認知症」の分科会に参加しました。

ヨーガのアーサナで身体を動かすことももちろん必要なことでやった方がよいのですが、瞑想はさらにやった方がよいと思いました。瞑想には、「集中瞑想」と「振り返る瞑想」があるのですが、「集中瞑想」では、集中力・記憶力・意思決定などの認知力が向上し、「振り返る瞑想」では記憶の整理・発想やひらめき・感情コントロール・精神の安定に効果があるとのことでした。学んだことをヨーガ・セラピー教室に生かしていこうと、思いました。

★ヨーガ療法のお話

【見立てについて】

今回は、ヨーガ療法の見立てにかかわってくる大切な部分である、伝統的ヨーガにおける人間の構造論についてお話しする予定ですが、その前に見立てについてお話しさせていただきます。

そもそもヨーガとヨーガ療法ってどこが違うの?と思われる方も多いと思います。ヨーガが身体にいいということは世間でも知られているように思います。ここで興味深いデータをご紹介します。数年前厚生労働省に提出された「ヨーガの有害事象に関する大規模横断調査」において、全国のヨーガ教室に通う方々の56.6%の方が何らかの持病を持ち、43.8%の方が通院中であり、その内主治医にヨーガをしていることを伝えている方が約半数ということが明らかになりました。ヨーガ教室に通う人の多くは、ヨーガ行者のように修行して三昧に至りたいわけではなく、健康になりたいから通っているのです。ストレス社会の出現によって多発しているストレス関連疾患、心身症、生活習慣病に罹っている、またはそれらを予防したい方々がヨーガ教室を訪れていると考えられます。そうすると、ヨーガが身体にいいからと何時でも誰にでも同じメニューを提供するのではなく、生徒さんの心身の状況を見立てて、どんな指導をするかを考えて、合意を取り付けた上で実習することが必要になってきます。ヨーガ療法は、生徒さんに何が必要なのかを考え、有害事象を防ぎつつ、健康促進を実現するために指導内容を考えていきます。そのときの見立てに必要なものがヨーガ療法カウンセリングとなります。

ヨーガで心と身体を健康に

【人間五臓説】

ヨーガ療法カウンセリングにおいて重要となるのが、ヨーガにおける人間構造論となります。

伝統的なヨーガでは、人間の心身構造を2つの仕方で説明しています。そのうちのひとつは、人間を5つの鞘に包まれた存在と考える「人間五蔵説」です。
食物鞘・生気鞘・意思鞘・理智鞘・歓喜鞘の5つの鞘の調和がとれている状態を、真の健康な状態ととらえます。

この説は、紀元前1,000年にさかのぼるとも言われているインドの聖典群のひとつ『タリティリーヤ・ウパニシャッド聖典』の中に記されています。簡単に言うと、不変・不動なる存在である真我が5つの鞘で覆われており、その真我が人間の存在であり、肉体に当たる一番外側の「食物鞘」は変化し続けるもので真の自分ではない、という考え方です。ヨーガ療法実習者のどの鞘の機能が不全なのかを見立てることによって、その方に必要なヨーガ療法を計画していくのです。

ヨーガ療法の技法で心や身体に適度な刺激を与え、そこから生じる反応に意識を向けていきます。続けて行うことで、自身の身体の使い方や考え方のクセに気づき、自己理解を深めていきます。私の師匠である木村慧心先生はよく、「ヨーガは心理療法である」と表現していますが、私自身もそうだろうと思います。というのも、ヨーガ療法実習で呼吸や身体の感覚を客観視する技法を行うと、実習者の心のあり方まで変わってくるということを経験するからです。ヨーガ療法は身体だけではなく、心にも効くと実感します。

もう一つの人間構造論、「人間馬車説」はまたの機会にお話しさせていただきます。