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第96回の続きです。8月13日は「ウォレス・コレクション」に行きました。ウォレス・コレクションとは、ロンドン中心部にあり、18・19世紀に4代に亙るハートフォード侯爵家とその子息リチャード・ウォレス卿が集めた芸術品を、未亡人が1897年に国に寄贈したことから始まりました。なぜハートフォード・コレクションと言わないのかは、4代目リチャード侯爵は生涯独身で、認知していない庶子リチャード(父と同名)が母方の姓ウォレスを名乗ったからです。ウォレス卿一家が生前暮らした、ハートフォード・ハウスに改修を加え、1900年に美術館として開館。18世紀後期のインテリアが保存されたまま、膨大なコレクションが展示されています。25室のギャラリーには、絵画・彫刻・家具・武器と鎧・磁器の比類のない傑作を収蔵しており国立美術館となっています。画像の大きな部屋はスペイン絵画と家具・調度品の部屋になっていました。
4代目侯爵とリチャード・ウォレスがフランスで育ったため、フランスの宮廷画家ブーシェ、フラゴナールの絵画や、ブルボン王家、ナポレオン一家に由来する品々なども多く展示されています。フランス絵画の部屋も家具・調度品がその時代つまりロココ様式に合わせて調えられ、窓と窓の間の壁にはフラゴナールの「ブランコ」が掛かっていました。
一家のコレクションとはいえ、莫大な資金はどこから来ているのか?どうも一族の男性は裕福な資産家令嬢との結婚を繰り返し、富を増やしていったようです。さりげなくレンブラントの自画像やルーベンスが飾られていて、ドキリとしました。ウォレス卿の未亡人が「何も付け加えず、何も取り除かない」ことを条件に国に寄贈したため、門外不出、他の美術館に貸し出すことはありません。
お屋敷丸ごと美術館になっていて、展示内容もすばらしく、今回の旅行でたずねた数々の美術館の中で秀逸でした。
ここに来る前に立ち寄ったのは、目と鼻の先にあるヒギンズ珈琲紅茶店(H.R.Higgins)です。2006年に娘がロンドンに行った時、お土産に紅茶を買って来てくれてとてもおいしかったので、今回の訪問目的の一つにしていました。インド系のおばさんの詳しすぎる説明は適当に聞いて、紅茶を何種類か量り売りで買いました。元々コーヒーの輸入販売から始めた店で、英国初のコーヒー専門店の創業が1942年。そこから名付けられた「ブレンド1942」を購入しました。そして1979年、エリザベス女王よりロイヤルワラント(英国王室御用達)に認定されました。ロイヤルワラントの選定基準は厳格な為、とても名誉なことです。店には大きな紋章が飾られていました。地下は喫茶店になっていて、螺旋階段を降りて一休みしました。カフェラッテがとてもおいしかったです。
午後は大英博物館に行きました。建物を取り囲む人の列におののき、大回りして別の入り口から入場しました。当然ながら、中もあふれる人、人、人。これだけは見なくては、と私が敬愛するナポレオンが持ち帰ったロゼッタストーン、ラムセス2世の胸像、スフィンクスと絵画を少し見ましたが、冷房はないし、あまりの暑さにぐったりして早々に退散しました。とにかく巨大で収蔵品もべらぼうな量です。失礼ながら「どうだ、世界中から持って来たぞ。タダで見せてやる。」と言われている気がしました。イギリスは物価が高いが国立美術館はすべて無料です。前述のウォレス・コレクションも国立ですから無料でした。
第96回で書いた「コ・イ・ヌール」について面白い文章を見つけました。以下、引用します。
「2010年、当時の首相デヴィッド・キャメロンがパンジャーブを公式訪問し、インドのメディアから攻勢を受けた。ダイヤモンド『コ・イ・ヌール』の返還が、イギリスによるインド統治時代の搾取への償いの始まりとなるが、どうだろうと提案されたのに対し、首相が『私がもしここで返すと言えば、気が付いたら大英博物館はからっぽになっていた、という事態になりかねない。』と答えた。」そうです。
初めてのロンドンは短い滞在でしたが、美しく魅力的なものをたくさん見られました。また見たいし、まだまだ見ていない所も色々ありますから機会を作って再訪問したいと思いました。
【参考文献】
【参考サイト】
(2025.11.19 高25回 堀川佐江子記)