第49回:JR京都伊勢丹創業20周年「紅白饅頭」と北浦接骨院

 私のデパート好きは子供のころからでして、原点はもちろん浜松にあった松菱百貨店です。母が作ってくれたよそ行きの服(死語ですね)を着て、連れて行ってもらうのが楽しみでした。ですから、2001年11月14日の経営破綻は寝耳に水で本当にショックでした。

 今年はJR京都伊勢丹が京都駅ビル建て替えと同時にオープンしてから20周年となり、9月11日は創業記念日でした。記念セール・イベントを知らせるリーフレットは早々と届いていました。注意深く見ていたら、「9月11日に3240円以上お買い上げの方、先着3000名さまに<鶴屋吉信>紅白薯蕷まんじゅう(20周年記念バージョン)を差し上げます。」と小さな文字で書かれているのを見つけました。これを見逃すわけにはいきません。
 薯蕷(上用とも書きます)まんじゅうとは、拙稿第19回雪餅でも詳しく述べましたが、小麦粉につくね芋や、山芋をすり下ろして混ぜ込むことで、より一層白くなりしっとりします。饅頭の中でもことのほか美味しいです。また私は「お得」に弱く、相手の思う壺にはまるのも好きなのです。と言って、いらない物を買う気はさらさらなく、何を買うべきか更にチラシをよく見ると、私の好物「彩果の宝石」という果汁から作ったゼリーの徳用袋(1080円)が、その日に限って500袋売り出されることを発見しました。お遣い物の箱入りはいつでもありますが、徳用袋は特別なイベントの時にしか出ません。よし、これを開店と同時に並んで3袋買い、紅白饅頭をもらおうと決めて、当日出かけました。
 開店と同時に入店はむずかしく、10時25分に地下1階の売り場に到着。列は他のお客さんの邪魔にならないよう、断続的に続き、最後尾は階段を上るようになっていました。一人5袋までと制限されていましたが、そこまで買う人は多くなく、余裕で3袋購入することができました。後ろに並んだご婦人は「5袋買う」と言っていましたが、紅白饅頭のことはご存じなく、教えて上げました。ビックリしていました。私はその足ですぐ、1階の特設会場に行き、レシートを見せ、ハンコを捺してもらって箱入り紅白饅頭を頂きました。3000個は大した数で、積み上げてありました。

 こうなると、もう一回3240円買い物しようという気になり、再び地下へ。今度は地下2階の食料品売り場へ行き、まず目についたのが海老でした。ブラックタイガーですが、100g216円!迷わず1kg買いました。それから鉄火や穴子の手巻き寿司1本108円を上限10本購入、合わせて3240円です。首尾良く、もう一つ紅白饅頭を手に入れることができました。ここで、コーヒーショップに行き、達成感にひたりながら一休みしました。

 話は変わって、その日、どうしても行かなくてはならない所が接骨院でした。20年近く前から、腰痛・首の痛みを治療してもらっている北浦接骨院は、以前住んでいた右京区にあります。私とほぼ同年齢の北浦先生はすばらしい手技を使って治す名人です。ただし、言うことが直球でキツイ、つまり毒舌家なのです。私はそこも大好きなので、長年お世話になっています。
 前日、9月10日は東京で催しがあり、長時間座って舞台を鑑賞した上に帰りの新幹線で姿勢がよくなかったせいか、朝起きたとき、ひさしぶりの腰痛で、これはマズイという状態でした。朝一で接骨院に行くべきところ、先ほどの事情で、寄り道をして、重い荷物を持って辿り着いたわけです。

 受付には先生のお姉さんがいます。45分位待って名前を呼ばれ中に入ると、「伊勢丹で買い物して来たん?」「はい、20周年の大特売で。」「食料品?」「はい」さすが。見抜かれています。ベッドに横になる時、更に「安いたってしれてるやろ」私は小声で「ただ安いと違うんです。今日だけ、3240円以上の買い物で紅白饅頭がもらえるんです。」「お饅頭?好きなの?」「はい、それはもう。」お姉さんは目をまるくして、すぐに先生に報告。北浦先生は「紅白饅頭、売ってないんですか?」「・・・」
 腰は右側の腰椎と骨盤の2箇所がねじれていたようです。低周派の電気を15分程かけ、後は先生独得の手技を駆使しての治療中、紅白饅頭の話です。「そういえば、最近あまり見かけませんね。」「そうなんです。昔はお祝い事に付きものでした。子ども達が小学校の創立記念日に持ち帰るのが楽しみでしたよ。ある時廃止されてしまいましたが。和菓子屋さんも、昔は慶事や年中行事にもっと注文が入った、と言っていました。だから紅白饅頭は貴重なんです。」が、その為にした、私の行動はかなり無謀だったようで、きつく言われました。
 治療はけっこう痛い思いをしましたが、来る時には腰をかばいながら歩いたのに、帰りは普通に歩けました。困ったときの北浦さん。待ち時間が少々長いのを我慢すれば、腕が良いから治りが早い、保険が効いて料金が安い、つまり、「上手い、早い、安い」と3拍子揃っています。結局1回で治りました。

 帰宅して、早速お茶をいれて頂きました。6000個一度に製造というのは少し無理があるようで、お味はまあまあでした。北浦先生の言う通り、自分で買うのがよろしいようです。

(2017.9.20 高25回 堀川佐江子記)